No.2 琵琶湖疏水と漢字の憶え方

 優太へ

 雨の日が増えて入梅(にゅうばい:梅雨入り)の季節になった。日本は長いから、場所(地域)によって春夏秋冬の様子が違う。パパの故郷の宮崎県は、快晴の時間(日照時間)も長いけれど、雨量もとても多い。京都は降水量(雨と雪を合算した量)が宮崎の半分しかなく、東京よりも少ない。特に七月・八月の京都は雨が少なくて、昔は水不足で困ったそうだ。

 明治時代に、琵琶湖から京都市へ湖水を通すための水路、琵琶湖疏水(そすい)がつくられた。まだ日本に大規模な土木工事の技術が無かった時代、この工事を監督したのは、大学を卒業したばかり、二十二歳の田辺朔郎(たなべさくろう)という若者だった。すごいよね。優秀な人だったのだろうし、他に誰も出来る人がいなかったのかも知れない。

 優太がもし、同じ立場だったら引き受けるかい?パパが同じ立場だったら、すごく怖いだろうけれども、チャレンジすると思う。命懸けの仕事になるし、必死で勉強して、何度も現場を見て歩くことになるだろう。でも、多少辛くても大勢の人々の役に立つ仕事にはヤリガイがある。

 琵琶湖疏水は桜の名所で、少し坂があるけれどもサイクリングコースとしても有名だ。夏休みに優太が京都に来たら、パパと一緒に行ってみよう。

 ところで、優太は「びわこ」を漢字で書けるかい?ちょっと難しく思うかも知れないが、よく字を見ると、「琵」も「琶」も「王王」がついているだけで、簡単な組みあわせだ。実は、社会(歴史とか地理とか)でみる漢字は、国語のテストで出てくる漢字よりも憶えやすいとパパは思う。沖縄県の県庁所在地の「那覇」とかよくでてくるけど、「西」と「革(かわ)」と「月」って憶えればいい。「革」は馬の鞍や手綱、馬に乗って月のぼる西に向かっている。「那」は「奈良」の「奈」と同じように、音を表す漢字なのだけど、日本語では「な」という音は美しいイメージがあるんだ。だからよく地名や人の名前(特に女の子の名前)に使われる。「覇」は、優太の好きなドラゴンボールやワンピースでも、「覇者」とか「制覇」とか出てくるよね。だから、那覇には「美しい島々を治める」意味があるのだろうとパパは思っている。
 歴史や地理で登場する漢字は、そんな風に色々な想像を湧かせるものが多い。だから漢字ドリルの内容など早く追い越して、色々な本から漢字を憶えるようになって欲しいとパパは思う。そうなると楽なもので向こうから勝手に頭の中に入ってくるから。


 さて、優太と約束したゲームの話をしよう。PS3ドラゴンボールのゲームは、「バーストリミット」と「レイジングブラスト」の2種類があるのだが、どちらがいいのかい?最新作は「レイジングブラスト2」だから、それで良ければ夏休みに京都に来るまでに用意しておく。そのときは囲碁も出来るように、碁盤も買っておこう。初心者のパパに負けると恥ずかしいぞ!

 二〇一〇年五月二十四日 早朝に東京へ向かう車中にて