No.4 宮崎の様子と文学全集

 優太へ

 仕事で宮崎に来ている。宮崎は今、牛の伝染病(口蹄疫:こうていえき)で深刻な状態だ。優太もニュースで知っているだろうが、大事に育ててきた牛を大量に殺して埋めなければならない。酪農家の人たちはどれ程辛いことだろう。それだけではなく、宮崎の牛は、松坂や神戸などの有名なブランド肉牛の種牛なんだ。つまり、宮崎で生まれた優秀な子牛を各地に運んで、それぞれで飼育をして各地の美味しい牛肉ができている。だから宮崎の牛が病気になると日本全国の牛に影響する危険がある。しかも、牛の病気が豚や人間に伝染(発病しなくともウィルスを運ぶ)するかもしれない。そのため宮崎では、車が出入りする駐車場には石灰がまかれ、あちこちに去年のインフルエンザの時のように消毒剤が置かれている。運動会・遠足・お祭りなども中止または延期になっているそうだ。全国から困っている宮崎の人達のために寄付が送られているけれども、まずこの伝染病が鎮静化しないといけない。こういう伝染病や、人にうつる感染症に興味があれば、母さんにたずねてみてごらん。キリッとお医者さんの顔になって、丁寧に教えてくれるはずだ。

 宮崎のおばあちゃんは、抗ガン剤で髪が抜けて坊主頭になっていたけれど、治療も順調でとても元気だった。庭に植えたブルーベリーが大きくなって、たくさん実が付いたから、夏に優太が来たら摘ませてあげたいと言っていたよ。

 そうそう、父さん(私)が小学生の時に読んだ、文学全集から二十冊を選んで送りました。漢字には全て振仮名を振ってあるから低学年でも読めるけれど、内容は四年生から六年生くらいまでを対象にした、どれも父さんのおすすめの作品です。今の優太ならば、きっと楽しく読めるはず。読み終わったら第二弾、第三弾もあるから教えてくれ。どの話がおもしろかったか、感動したか、手紙に書いてくれると嬉しいな。

 二〇一〇年五月三十日 宮崎・一番街のマクドナルドにて